長谷川 今人さん [写真家](50代男性) 長谷川 今人さん [写真家](50代男性)

長谷川 今人さん [写真家](50代男性)

1961年生まれ、千葉県木更津市在住。1993年に写真を始める。アサヒカメラ年度賞8回受賞。1998年には千葉パルコにおいて写真展「EXTRA−登場人物の多いフォトシネマ−」を開催。最近では地元・木更津市で活躍するシンガーソングライター松本佳奈氏の写真集を担当。

自分のスタイルを貫くことも大切なこと。そういう人たちが集まって刺激を得ていた場所がなくなるというのは、本当に寂しいです。

落ち着いたロートーンの声についつい聞き惚れてしまうダンディズム漂う長谷川さん。写真家としてご活躍中、1998年には千葉パルコの8階のスペースで写真展を開催したご経験があるとのことで、千葉パルコには、思い入れが深いそうです。そんな、写真家・長谷川さんにとっての千葉パルコと、そして写真展開催時の思い出などをお伺いしました。

無名のアマチュア写真家に、8階のフロアを10日間も貸してくれたんです。

「僕はメインは美容師をやっているんですけれども、頼まれると色々と撮らせていただいたりしています。もともと私は鉛筆画を書いていたんですが、絵だと時間がかかるので、写真の方が手っ取り早いかな、と。そんな気持ちで写真を始めました。もう19年前なんですけれども、ある人が千葉パルコに持ち込んでくれたんです。『木更津にこういう写真を撮る人がいるよ』と。そして、千葉パルコで写真展をやらせて欲しいと頼んでくれたんです。僕自身はまさか通るとは思っていなかったんですが、それを千葉パルコさんが受け入れてくれたんですね。懐が深いというか……。無名のアマチュア写真家に、8階のフロアを10日間も貸してくれたんです」

千葉パルコは懐が深い”。長谷川さんならではの表現で、思い出を語っていただきました。実際に写真に登場した方々をはじめ、千葉パルコに買い物に訪れていた方々が数多く訪れ、大盛況だった10日間。懐が深く、活動にも弾みをつけた千葉パルコでの写真展開催。だからこそ、思い出はひとしおだとか。そんな長谷川さん、写真展を開催するまでに、千葉パルコを利用したことはあるのでしょうか。

千葉パルコのテレビCMから写真へのインスピレーションが沸いたりしているんです。

「もともと僕は千葉パルコ大好きでした。美容学校も本千葉でしたし、千葉市に2年くらい住んでたこともあるので、美容室での仕事が終わってからよく行っていましたよ。やっぱり刺激があるしね。パルコといえば、自分達の年代にとってはテレビCMが不思議な世界観で、一歩先を行った感じだったのが印象的でした。そういうテレビCMから写真へのインスピレーションが沸いたりしているんです。ファッションだけじゃなくてカルチャーの発信地的な位置付けでしたね。だから、千葉パルコに行けば刺激を受けられる、っていうのがあって、美容師でしたから、今はどんなものが流行っているのかとかを知るために行ったり。綺麗な女の人も沢山いるし(笑)。買い物は、バーゲンにはよく行っていて、洋服を買いましたね。20〜30代の頃が多かったですね」

女性をキレイに輝かせる職業・美容師として働いていた長谷川さんにとって、千葉パルコは貴重な情報源だったようです。長谷川さんの世代の方々にとっては、パルコのテレビCMはとても印象的、というお話を伺うことが多いのですが、まさかそこから写真へのインスピレーションが沸いているとは、びっくりしました。そして、長谷川さんの20代と30代を彩ったファッションは、千葉パルコのバーゲンで仕入れた洋服だったんですね。

自分のスタイルを貫く人たちが集まっていた場所がなくなるというのは、本当に寂しいです。

「千葉パルコで写真展をやらせていただいた時の一番の印象は、何と言っても“普段の写真展と客層が全く違う”っていうことですね。通常だと、写真好きな年配の方とかが多いんですけど、千葉パルコで開催した時は、洋服を見に来たついでに寄ってくれるオシャレな若者が圧倒的でした。そういう箱で写真展を開催させていただけたのは、大きな経験でしたね。だから閉店は残念です。新しいチャレンジをするところが減ってしまうというのは寂しいですよね。時代に迎合しているところばかりになっていくというか。僕もデジタルカメラは一切使わないんですが、自分のスタイルを貫くことも大切なことだと思います。そういう人たちが集まって刺激を得ていた場所がなくなるというのは、本当に寂しいです」

時代の流れとともに、人々の価値観や流行も目まぐるしく移り変わっていきます。千葉パルコに対して「無名のアマチュア写真家に、8階のフロアを10日間も貸してくれた」という深い想いを感じているという長谷川さんにとって、自分のスタイルを貫く人たちの中心地・千葉パルコがなくなることには、時代の移り変わりというものを感じていらっしゃいました。その上で、さらに「自分のスタイルを貫くことも大切なこと」と提唱する長谷川さん。貴重な経験の中から伺うことができた、貴重なお話でした。