後藤 大輔さん [アーティスト](30代男性) 後藤 大輔さん [アーティスト](30代男性)

後藤 大輔さん [アーティスト](30代男性)

アイスランドの音楽、アメリカンカントリー、日本の音楽のパイプを通した、どこか切なく懐かしいドリーミングなサウンドが特徴的なバンド「クリス ヴァン コーネル」のボーカル・アコースティックギター・マンドリン・鍵盤担当。作詞作曲も行う。今年6月に1stアルバム「余暇と祝祭」をNiw! Recordsよりリリース。

地元・千葉のタワレコで買ってくれた、っていうのが嬉しかったですね。

バンドマンとしての独特な落ち着いたオーラを身にまとってインタビュー会場に登場した後藤さん。ご自身は、音楽という世界を通じて、千葉パルコのタワーレコードに強い想いを持っておいでです。そんな中、千葉パルコ閉店のニュースを受けて、地元のバンドマンが活動する土壌が縮小していくことに懸念を示しつつも、「音楽で千葉を盛り上げて、若者が集まるコミュニティを取り戻そう」という熱いメッセージを発信していただきました。

スケボーの板を持ちながら楽器屋さんに行って、それからタワレコ。

「一番千葉パルコと近かった時代は、お客さんとして来ていた10年ほど前で、千葉パルコ前の千葉中央公園でスケボーをやっていた時代ですね。スケボーといえばムラサキスポーツ、っていう。その頃の千葉中央公園はスケボーかBMXかで分かれていて、スケボーをやっていた人はほとんど利用してたんじゃないですかね。千葉パルコの屋上にスケボーパークがあって、そこもちょいちょい利用していました。そして、スケボーの板を持ちながら楽器屋さんに行って、その後タワレコでCDを見る、っていう流れが僕の中では定番でしたね。それから19歳の時に、当時やっていたバンドで初めてのCDリリースをしたんですが、その時からタワレコの店員さんとは仲良くさせていただいて、今に至る、っていう感じです」

筆者も時々目にする、スケボー板を持ちながらCDを物色する若者ですが、10代の頃の後藤さんもそのひとりでした。屋上にスケボーパークがあったことは、スケボーフリークの間では有名な話ですよね。ひとりのお客さんとして訪れた側面だけではなく、CDのリリースといった非日常的な側面でも千葉パルコと関わりがあった後藤さん。それだけに、千葉パルコのタワーレコードへの想いは人一倍のようです。

地元・千葉のタワレコでCDを買ってくれた、っていうのが嬉しかったです。

「リリースツアーで千葉に来た時には、バンドマンはCDショップに挨拶回りをするのが定番になっているので、その一環でタワレコにも挨拶に行ったんですが、僕は地元が千葉なので、すごくよくしていただいたという思い出があります。タワーレコードのスタッフさんが、僕らに対する気持ちがすごく伝わるPOPを作ってくれたり、新宿や渋谷の大きな店舗にも負けないくらい、気合を入れてやってくれて。地元のバンドマンに優しいなって感じました。でもその時は、バンドの流れについていくだけで精一杯で、気持ちに全然余裕がなくて、タワーレコードにCDが並んでいるのを見ても、うまく喜ぶことができなかったのが本当のところです。だけど、地元の友人やお客さんがタワーレコード千葉店で『見たよ』『聞いたよ』『買いました』という連絡や言葉をかけてくれたりして、そこで初めて喜ぶことができたというか、なんていうか嬉しかったです。地元・千葉のタワレコで買ってくれた、っていうのが嬉しかったですね。本当に、千葉パルコ・タワーレコード千葉店がなければ、出会わなかった人が多すぎる僕の人生、とても恩義を感じます」

CDの発売の後、バンドマンはそれ以前より忙しいもの。自分の作り上げた作品を、満を持して世に知らしめるためにツアーへと出かけます。地元・千葉のタワーレコードにCDが並び、嬉しい反面、ツアーに大忙しだった後藤さん。全国各地で、音楽を届けていたとのことですが、その中でも地元は温かかったんですね。そういう“恩義”を感じているからこそ、今回の閉店のニュースでは寂寞の想いがこみ上げてくるそうです。

音楽で千葉が盛り上がれば、若い人たちが集まってくれるはず。

「ツアーで全国を回っていて、ライブハウスと地元のCDショップがうまく連携しているところって、すごく音楽が盛り上がっているっていう印象があるんですよ。千葉は、それができているエリアじゃないのかなと思っています。なので千葉パルコが閉館して、それがなくなるってことは、単純にライブしに来るバンドが少なくなっちゃうんじゃないかな……。ものすごく影響があると思いますね。千葉パルコのタワレコは、地元のバンドマンが活動を頑張るための目標みたいになっているところがあると思うので、悲しいですよね、本当に。千葉の音楽の土壌がどんどんなくなっていくので、活動しにくくなる側面もあると思いますけど、千葉には、『千葉LOOK』、『千葉ANGA』、『稲毛K’s Dream』といった音楽活動ができる環境が整っているので、千葉パルコのタワレコがなくなってしまった分を、ライブハウスに人との繫がりを求めて行けば、また何か生まれていくと思っています。音楽でも千葉が盛り上がれば、また若い人たちが集まるコミュニティができる可能性が高まっていくと思っています」

今まで、趣味や音楽活動を支えてくれた千葉パルコ。千葉市にゆかりあるバンドマンであれば、その気持ちは強く持っているもの。後藤さんはそんな人たちに、今度は音楽でコミュニティを作っていこう、と呼びかけています。きっとそれは、活動を力一杯応援してくれた千葉パルコに対する、恩返しだと思っているのかもしれません。これからも、素敵な音楽で、千葉を魅了してくださいね。